東北の旅

俺は先週、東北を回る旅に出てきた。本来の目的は東北大学のオープンキャンパスを見に行くことだったが、東北に住んでいる祖父母に会いたい、地元宮城の友達と会いたいという思いもあり、結局宮城、青森、山形の3県を4日で回るという超ハードスケジュールになった。

 

旅行を計画するのはこれが初めてで、思ったよりも骨が折れた。行きたいところすべてに行きつつも、予備校を休む日を最小限に抑えるためにうまく日程を調整しなければならない。しかも平日は友達はみな大学に行っているから、遊ぶとしたら休日、というように、様々な制約がある中で、移動手段や移動時間も考慮に入れて、日程を決めるというのは簡単ではない。今回は祖父母の家や友達の家に泊まったが、これでホテルなどに泊まるとなると計画はもっと大変になるだろう。

 

しかし、旅の計画を立てるのは楽しいことも確かだ。俺は観光しに行ったわけではないが、行く先々のことを考えたり、何を見て何を食べて誰と会えるのかに思いをはせたりするのはこの上ない楽しみである。東北は1年訪れていなかったから、懐郷の思いが募った。

 

移動にはかなり疲れたが(合計で24時間以上!)、旅はとても楽しいものだった。祖父母の元気そうな姿を見て安心し、都会の喧騒から離れてゆったりと過ごした。また中学の友達とも久々に遊び、中学以来変わらない仲の良さで大いに楽しんだ。うなぎや牛タンなどおいしいものもたくさん食べた。最後に東北大のオープンキャンパスを見に行って学生の楽しそうな話を聞き、すごい研究に触れ、大学受験へのモチベーションが高まった。

 

こんな感じで非常に有意義な旅行となったが、その中で感じたことがある。それは、東北は東京よりも時間がゆっくり流れているということだ。帰国以来東京に住んでいるが、東京での生活は時間的にも精神的にも忙しいと感じている。勉強をしたり家事をしたり遊びに行ったりと時間的にもかなり忙しいのだが、精神的にも落ち着くことができることが少ない。外を歩いても多くの人々が忙しそうに速く歩いているし、話し声や車の音、店の音楽が身の回りにあふれる中で、静かにゆったりとできる時間というものがここではあまりない。物が多くて楽しいのは確かだが、故郷に帰って落ち着きたいという思いが募ってきていた。

 

そこで今回東北に行ってみると、思った通り大いにゆったりとできた。俺が行ったところは山形を除きど田舎というわけではないが、それでも東京よりずっと落ち着いた雰囲気であった。見渡す限り灰色の高層ビルが立ち並ぶ東京とは違い、程よい自然の中に囲まれ、身の丈に合った生活ができた気がした。特に仙台は気に入った。宮城で育った俺にとって仙台は大都会であったが、東京を経験した今、仙台は少し見劣りするのは確かだ。東京ほど高いビルは多くなく、少し外れればもう山の中だ。しかしそれでも、田舎と都会の絶妙のバランスが、仙台にはあると思う。山と海に挟まれた仙台には豊かな自然があり、「杜の都」と呼ばれるだけあって街中にも緑が多い。中心部はかなり人が多いものの、東京のような忙しい印象はあまり受けなかった。それでいて東北最大の都市であるから、買い物には困らないし、遊ぶところも多々ある。観光地やおいしい食べ物もある。仙台は本当に暮らしやすいし楽しい。宮城に住む友人たちの話を聞き、また実際に仙台を見て、また宮城に住みたいなあとつくづく思った。

 

4日間の旅を通して、東北では、時間に追われるのではなく、過ぎてゆく時間を楽しみながら暮らすということができたと感じた。大学はまだどこにするか決めかねているが、たまには都会を離れて田舎でゆっくりとするのもいいなと強く感じた。