宮城原付散歩

こうやってカブに乗っていると,たとえ止まっていても,自分がどこにでも,どこまでも行けるっていう気分を感じられるのよ
礼子「スーパーカブ」

5/16 瑞鳳殿

まずは近場で.「仙台 名所」で検索すると上位に出てくるのが,この瑞鳳殿.宮城の英雄・伊達政宗を祀る廟である.仙台市中心部に近く,駅からおよそ10分で着く.住宅街に突如現れる小高い山の上に,それはある.

山を少し登ったところで原付を停め,緑に囲まれた古風な石段を登っていくと,入口がある.入場料を取られることをここで初めて知った.570円を払って中に入る.

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門をくぐって階段を登ると,また門がある.その向こうに姿を表したのは,極彩色のきらびやかな建物である.

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豪華絢爛な装飾が施されているのにもかかわらず,周囲の自然と調和した,落ち着いた雰囲気を感じるのは気のせいだろうか.

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仙台藩二代藩主 忠宗,三代藩主 綱宗はそれぞれ,同じ山に建てられている感仙殿と善応殿に祀られている.これらも,瑞鳳殿を踏襲したデザインの建物である.

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この季節は,青々と茂る木々が見られた.その多くは紅葉の葉だったので,秋に来くればまた違った顔を見せてくれるだろう.友人に瑞鳳殿の話をしたら,彼は冬に行っていて,雪が積もっていてきれいだったと言っていた.季節が変わったらまた来ようか.

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5/19 千年希望の丘

県南の岩沼市の海岸付近に,震災後建設された施設.平日だが,この日は全部オンデマンド授業で実質全休なので行ってみることにした.前日,原付にスマホホルダーを取り付けたので,早速スマホをナビとして使う.

道中,原付が曲がる仕組みについて考えていた.頭の中でベクトルをこねくり回していると,理解できた.原付では,体重を曲がりたい方向に傾けることによって曲がる.体を傾けることで曲がりやすくなるということではなく,体を傾けないと曲がれないのである.これは角運動量保存則から説明することができる.体を傾けると,車体を倒す方向に力が働く.すると,ハンドルを切る方向にトルクが働き,回転軸が変化する.それでは,逆に,体重移動なしで,ハンドルを切ろうとするとどうなるだろうか.実際にやってみると,回そうとしているのにうまく回らず,車体が傾く.これも同様,角運動量保存則から説明できて,ハンドルを切るように力を加えると,車体を倒す方向にトルクが働く.曲がるためには,ハンドルが回る必要があるのだが,ハンドルを回そうとすると回らず,体を傾けると回していないのに回るのである.逆に,進行方向を変えずに車体を傾けたいと思ったときは,ハンドルを切れば傾けることができる.前方から飛んでくる虫や銃弾をとっさに避けるときに使えるかもしれない.回転運動はこのように非直感的な性質があるので,力学の授業では理解に苦労した.

実家から約20分ほど原付を走らせると海沿いの地域に出る.このあたりは「何もない」というのが第一印象.以前は家屋や木々が立ち並んでいたのだろうが,津波で流された後,またここに建物を建てようとする人はいないのだろう.津波を耐えた木々が散見されるだけの開けた土地を道路が貫く.工事用の車両とともにそこを走る.

目的地の少し手前の海浜公園に立ち寄る.平日で天気も良くなかったせいか,人気はない.駐車場に原付を停め,少し歩く.赤い花が咲いた小高い丘があるのでそこを登る.どうやらこの丘は緊急時には避難所として機能するようだ.この程度の高さで安全なのかという疑問があるが,大震災の大津波でも浸水しないような高さにはなっているようだ.しかし命は助かるとしても,周りが波に飲まれる中この小さな丘の上で救助を待つというのは相当な恐怖だろう.

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丘の上に立つと,灰色の海が見える.海から少し距離があり,生憎の天気も相まって,眺めが良いとはお世辞にも言えない.振り返ると,遠くに市街地,その向こうに山.

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晴れていれば,青い空と青い海はつながって見えるだろう.曇っていても,灰色の空と灰色の海の境界は曖昧だ.空が海を映しているのか,はたまた海が空を映しているのか.


また原付に乗り込み数分走ると,千年希望の丘に着く.こちらも人気は殆ど無い.千年希望の丘は,震災の記憶を後世に伝えるため,そして未来の津波の威力を低減させるための施設である.震災当時の状況を伝えるパネルがいくつか立っており,震災の被害者の慰霊碑がある.そしていくつかの丘と,低い木々がある.丘は,海浜公園のそれと同様,避難所として機能する.木々は,震災後植樹されたもので,成長すれば防災林として内陸部を津波の脅威から守る.通常時は散策路となっている.

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あまり眺めが良くない.天気が良いときに来たかった.

5/23 塩竈

この日は少し遠くへ.宮城の海沿いの街である.仙台駅からは1時間程度で行ける.以前行った松島よりも少し近い.天気はというと,また曇っている.せっかく海の近くまで行くのだから,晴れる日を狙っていけばよかったと少し後悔している.

国道45号線をずっと東へ走っていくと,多賀城市を過ぎて塩竈市に着く.特に当てもなく原付を走らせていたら,突然姿を表したのは大きな鳥居,山を切り裂く階段と,その向こうにかすかに見える大きな建物―鹽竈神社である.壮大なビジュアルに思わず圧倒された.

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近くに原付を停め,神社を目指して歩く.道中,「旧亀井邸」なるものがあり,観光スポットらしいので立ち寄ってみる.宮城に拠点を置く大企業「カメイ」の創業者が過去住んでいた家で,大正時代の暮らしが感じられる建物である.

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再び,神社に向かって歩みを進める.先程見た長い階段は正面の表参道だが,今は横から参道を歩いている.雨が降ってきた.傘をもって来るべきだった.半袖だったので肌寒い.上着をもってくるべきだった.まあいい.鳥居をくぐると,石段の上に門が見える.その奥に拝殿がある.

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参拝後は例の表参道の階段を下った.勾配がかなり急であり,雨で濡れて滑りやすくなっていたのでかなり危なかった.段数を数えながら行ったら,201段だった.切りが悪くて気持ち悪い.1段多く数えてしまったかもしれないと思って調べてみたら,正しくは202段だった.1段少なく数えていた.もっと気持ち悪かった.

鹽竈神社の隣に志波彦神社というのがある.横の参道を歩いていたときに,道が分岐しているところでその神社があったので,もう一度横の参道を登り直して今度は志波彦神社に行く.こちらもかなり大きな神社で,立派な鳥居があった.

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戻る途中,和風の庭園があって,その向こうに海が見えた.松島で見たときのように,島が多く浮かんでいる.

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売店に立ち寄り,揚げ餅を購入.お茶の試飲をもらった.

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原付に戻る.海の方に向かって走り出す.マリンゲート塩釜という施設があったので立ち寄る.レストランは,昼食にしては時間が遅いからか(2時過ぎ),定休日だったのか,はたまたコロナだからか,どれも閉まっていた.海鮮を食べたかったのに.少し海を眺める.遊覧船が多く浮かんでいる.

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その後海沿いをうろうろしていると,魚市場を見つけた.ここならシーフードにありつけるかもしれない.妙に人気がないと思っていたら,食堂は3時で閉まってしまったらしい.ここに着いたのは3時20分ほど.もう昼飯時はとっくに過ぎているので,昼食は諦める.ちゃんと下調べをしてから来るべきだったと反省.

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展望デッキがあるので海を眺める.人は誰もいない.雲行きが怪しくなってきた.寒いしそろそろ帰ろうか.

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海岸は釣りに来ている人が多くいた.その横をとぼとぼと歩いていると,エモい島を見つけた.松に覆われた小さな島で,島の奥の一端に赤い鳥居が覗いている.海岸とは橋でつながっている.「籬が島」と言う.「まがきがしま」と読む.「曲木」とも書く.橋を渡ると,別の鳥居があり,「奥の細道」と記された石碑が脇に立っている.松尾芭蕉が奥の細道でこの島を詠んだらしい.

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小さな神社がある.

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島からまた海が見える.すこし晴れ間が見えてきた.

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最後に

ガソリン満タンで500円切る.

写真を撮るのが,下手.