北海道一周記 (前編)

2023/9/20-9/27 にバイクで北海道を一周するツーリングをした.本記事は前編ということで,旅行前の出来事及び旅行4日目の 9/23 までの出来事を記す.

きっかけ

去年関西をバイクで走ったときに,「やっぱりバイクは自然の中を走るべきだ!」と悟った.

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バイクは街の観光において便利な移動手段であったことは間違いない.しかし,バイクで走ることそのものを楽しむためには,他の車も,信号も,歩行者もいない,走りを妨げるものは速度制限と恐怖心くらいしかないような,そんな道を走りたい.

そうなると北海道に行かざるを得ない.ライダーが北海道に行くのは恋人同士がディズニーランドに行くくらいテンプレだと思っている (そうなんですか?知らない).バイクは恋人であり,北海道は夢の国なのである.

行くなら学部最後の夏休みである今夏くらいしかないが,一人で行くのは大変だからだれか一緒に行ってくれる人いないかな〜と言っていたら,ちょうどラボの同期 (以降 "Ninja" とする) が北海道ツーリングに誘ってくれたので飛びついた.

旅行前

旅行計画

行くのが決まったのが8月末.双方の都合をみて, 9/19 から行くことになった.

Kindle Unlimited の無料体験に登録し,北海道ツーリングを特集したバイク雑誌をいくつか読んだ.行きたい場所や走りたい道路の目星をつけた.雑誌に乗っている北海道の自然や道路,食べ物の写真を見ると,北海道に行きたいモチベーションが高まった.

Ninja と話してルートを決めた.時計回りに回るのが良いらしい.車道は左側通行だから,時計回りだと海側を走ることになり,海がより近くに見えるからだ.絶対に行きたいところをリストアップして,それらを全て回れるように一周のコースを決めた.まあ行きたいところと言っても,だいたい宗谷岬とか知床とか納沙布岬とか襟裳岬とかの突端部なので,結局北海道の縁に沿ってずっと行くことになる.俺が 9/30 に用事があり,それまでに帰る必要があるので,1週間位で北海道を時計回りに一周する計画になった.

宿泊は適当にその日の気分で決める感じになりそうだ.Ninja がでかいテントを買ったらしいので,キャンプができる.それが一番安上がりだろう.ただ,北海道にはライダーズハウスなる,ライダーが安く泊まれる宿があるらしく,それも面白そうだ.キャンプだけだと疲れるだろうから,ライダーズハウスなどの安い宿を織り交ぜるつもりだ.

あとは荷物をまとめたり足りないものを買ったりした.小さめのシートバッグを持っていたが,全然容量が足りないので,サイドバッグを買った.あとインカムも買った.

北海道を舞台にした作品の摂取

旅先が舞台になっている作品は,3回別の楽しみ方ができる.すなわち,

1. 行く前に読む・観る.普通に作品を楽しむのに加え,観光ガイドとしての楽しみ方ができる.
2. 聖地巡礼.作品内での描写を思い出しながら舞台となった場所を訪れるのはとてもおもしろい.
3. 行ったあとに読む・観る.場所の位置関係や具体的な情景がわかると,物語への没入感が段違いに良くなる.

特に気に入った作品は,このように3回楽しむことにしている.

北海道に行くにあたって読んだ小説や観たアニメ,映画を紹介しよう.

  • 湊かなえ「物語のおわり」
    • 湊かなえは「告白」しか読んだことなかったが,北海道を舞台にした小説を調べていたらこれが出てきたので読んだ.未完成の小説が,北海道を旅している人々の間で手渡されていく.それぞれの人が,自らの境遇に登場人物を重ねながら,思い思いの結末を導いていく.湊かなえらしくないと評されているようだが,実際「告白」のような陰鬱とした感じがなく,明るい感じの小説だった.登場人物はだいたい何らかの闇を抱えて北海道に来ているが,小説の結末に将来の希望を託しているような,そんな雰囲気があった.終わり方が爽やかでいいね.あとバイクツーリングしているキャラクタも出てきていいね.ラベンダー畑がしばしば登場したので行ってみたいなと思ったがラベンダーの季節はとっくに過ぎていた.
  • 「ばくおん!!」
    • これいつ見たんだっけ.......去年バイクの免許を取った後くらいに見た気がする.女子高生がバイクに乗るギャグアニメであり,4人のヒロインたちが4大バイクメーカーを象徴している.このアニメを見て初めて,スズキがディスられがちということを知った.それなのにこのアニメにスズキが協力しており,ディスられていることを誇りに思ってそうなところまで含めて超面白い.あまり細かいところを覚えていないが,唐突に「北海道いこう!」って言って徹夜で本州を縦断して北海道まで行き,そこからさらに北海道を一周するみたいな話があったと思う.全体的に狂気じみていて非常に面白い.原作の漫画はまだ続いているらしいので,そのうち読んでみたい.
  • 「雲の向こう,約束の場所」
    • 新海誠の2005年のアニメ映画.北海道が舞台と聞いて観たけど,別に舞台ではなかった.......せっかくなので感想は書いておく.特殊能力持ちの少女を救うか世界を救うかの2択の話で,大体天気の子だった.でも,ディストピア的な雰囲気とか,超巨大建造物とか,飛行機とかコンピュータとか平行世界とかが出てきて,SF感が強くて楽しかった.あとは新海誠作品らしく,作画がきれいだな〜と思っていた.
  • 「ゴールデンカムイ」
    • 日露戦争後の北海道でアイヌの埋蔵金を探す話.かなりグロ描写が多いが,それをキャンセルするように癒やし描写が時折投入されるので精神を安定に保ちながら見ていられる.ストーリーもとても面白い!埋蔵金を追う色々な陣営の色々な駆け引きが複雑で予想できない展開を生んでいる.さっきまで敵と思っていた人が味方になったり,逆が起こったり.2期の最後とか圧巻だった.観光ガイドとしては......網走監獄くらいだろうか?これは絶対に行きたい所リストに入れた.あとは,アイヌ文化に興味をもたせてくれたのも大きい.アイヌ語由来の地名をはじめとして,北海道に残るアイヌ文化を見つけながら走るのも楽しいだろう.北海道に行くまでに2期まで見終わった.この時点で4期まで放送されているらしいので,帰ってから続きを見るのが楽しみだ.

持ち物

バイク,バッグ系

  • バイク
  • ヘルメット
  • ジャケット
  • グローブ
  • インカム
  • シートバッグ (30L)
  • サイドバッグ (30L)
  • ウエストバッグ

服装,雨具系

    • 内訳 (初日に来ているものも含む): Tシャツx5,長Tx1,冬用インナーx2,パーカーx1,ズボンx2,短パンx1,靴下x4,下着x4
  • ネックウォーマー
  • 冬用手袋
  • 合羽
  • 折り畳み傘

宿泊系

  • 寝袋
  • ブランケット
  • タオルx2
  • 歯磨きセット
  • コンタクト洗浄液
  • 焚き火台

その他小物

  • メガネ
  • 充電器
  • モバイルバッテリー
  • 水筒
  • 保険証控え
  • 懐中電灯
  • 絆創膏
  • 双眼鏡
  • 小説
  • 論文
  • メモ用紙
  • 筆記用具
  • トランプ
  • 手ぬぐい
  • レジ袋xたくさん
  • ティッシュxたくさん

文明のないところに1週間行くような勢いで色々準備していたけど,よく考えると北海道には文明があるので,足りないものがあれば現地で買い足せばいい.

寝袋,ブランケット,合羽,厚手の服がかなりかさばるのでパッキングが大変だった.

行動記録

Day -3, -2, -1 (9/16-18)

東京で競プロの合宿があったので行っていた.

Day 0 (9/19)

朝.夜行バスで宮城に帰還.荷物を片付けたり仮眠を取ったりする.

昼.パッキングする.若干靴下が足りなさそうだったので買い足す.あと給油.北海道のほうがガソリンが安いなら向こうで給油しようかと思って値段を調べたが,平均的には宮城のほうが微妙に安いらしいのでこちらで入れておいた.

荷物はこんな感じ.すぐに取り出したい小物はウエストバッグに入れ,その他は適当にシートバッグとサイドバッグに突っ込んだ.また,フェリーの中でサイドバッグを持ち運ばなくて良いように,フェリーの中で使う着替えなどはシートバッグに入れておいた (フェリー典型).

パッキングが終わったので,バッグをバイクに積む.このサイドバッグはシート下に挟み込んで固定するタイプのものだ.サイドバッグが届いたときに一度取り付けを確認しておいたのだが,荷物が入って重い状態で取り付けるのは勝手が違う.シート下にサイドバッグを置いたあと,うまくシートがはまらない上に,なんか引っかかってシートが中途半端にはまった状態から抜け出せない.集合時間が刻々と迫っている中,しばらく格闘してもシートが外れず,多量の冷や汗をかいた.

なんとか引っかかりを解消してシートを取り外せた.結局,サイドバッグをシート下に挟むことは諦め,シートバッグの固定用バンドでサイドバッグもまとめて挟むことで固定されることを期待することにした.強度に若干不安があるが,サイドバッグのバンドとシートの間の摩擦とか,シートバッグの重みとかでも支えられるので,なんとかなるだろう.

1. シート下にシートバッグ固定用のバンドをくぐらせる
2. シート上にサイドバッグを置く
3. 上からシートバッグを固定

無事積み込みが終わったところで,仙台港に向かう.17:30 に仙台港で Ninja と待ち合わせている.仙台港まで走ってみて,荷物の固定に問題がなく一安心.俺は 17:30 に間に合ったが,Ninjaが財布を忘れたらしく取りに戻って大幅に遅れる.そんなの忘れちゃだめだろ.俺は翌日の朝飯を買うため (フェリーのレストランは高い) ,近くのコンビニに行った.帰ってくるときに道を間違えて,乗船開始に5分ほど遅れてしまった.

船内でNinjaと合流.別々にチケットをとったが,たまたま同じ部屋だった.

今回乗るフェリーはきたかみ.去年名古屋に行ったときに乗ったいしかりとは内部のレイアウトが違った.いしかりでは,一番安い部屋が和室に雑魚寝するタイプだったが,きたかみではカプセルホテルみたいな小部屋になっていた.

19:40,北海道・苫小牧【山奥に入っていく川】に向けて出港.

夜飯はフェリーのレストランでバイキング.美味しそうな料理がたくさんあったので調子に乗って大量に取ってしまい,フードファイトが勃発.美味しくいただきました.

デッキに出て外を眺める.とっくに暗くなっている.陸の方は街明かりや灯台などの明かりが見えるが,海の方は全部真っ暗だ.外にいるのに何も見えないくらい真っ暗というのはあまりない体験なので面白い.しかし,目が慣れてくると水平線が見える.空はなんというか透明感がある黒で,海は漆黒という感じの違いがあることに気づく.

船のデッキは明るいので満天の星空とは行かないが,星が結構見える.

風呂に入ったあと,10時半頃に就寝.翌朝は日の出を見たいので早く寝る.

Day 1 (9/20) 苫小牧 → 札幌 → 新十津川

5時に起床.デッキに出て日の出を見ようとする.曇っていて日の出の瞬間は見れなかったが,あたりは明るくなっており,昨夜は見れなかった海が見える.だいぶ沖の方を航海しているらしく,あたり一面海で,陸が見えない.そういえば,昨夜からずっと圏外だ.

9時まで二度寝したのち,前日にコンビニで買ったパンを食べる.再びデッキに出ると,日が昇っておりだいぶ明るくなっていた.北海道の大地も見えてきた.気温は結構肌寒い.

船内で, Ninja とこの日の行動計画を立てる.まず苫小牧から札幌【乾いた大きな川】まで行ってしばらく自由行動.俺が札幌で別の友人と飯を食べる約束をしてしまったからだ.もともとNinjaは別ルートで北海道に上陸し,札幌あたりで合流する予定だったので,それならと飯の約束を入れたが,結局Ninjaも仙台から来ることになり,開始早々自由行動という変な感じになってしまった.その後はできるだけ札幌から北上しておきたい.札幌と旭川の中間に滝川という市があり,時間的にここまで進むのが良さそうだ.周辺で泊まれる場所を探していたところ,Ninjaが隣の新十津川町にある吉野公園キャンプ場というのを見つけたので,そこを目的地に設定した.

11時に苫小牧に入港.フェリーから飛び出して北海道大陸に初上陸.なんなら,日本で本州以外の場所に行くのがはじめてだ.

苫小牧の街を抜け,支笏湖【大きな窪地】を経由して札幌を目指す.走っていてすぐに,北海道特有の道路標識に気づく.道路脇や停止線,中央分離帯を指し示す標識が多い.道路が雪で埋まってしまうとこれらが見えなくなるので,わざわざ標識を設置する必要があるのだ.あとは鹿飛び出し注意の標識がある.本当にでるのだろうか?この答えはこれからの旅でわかることになるだろう.

少々,いや,だいぶ肌寒い.今年の北海道は暑いと聞いていたので,普通に宮城を走るような服装で走っていたが,風が冷たく鳥肌が立ってくる.厳しくなってきたので重ね着をする.

支笏湖沿いの道を走る.大きく美しい湖だ.湖と道路の間を遮る木などがなく,湖を間近に見ながら走れる,良い道だ.この道には「秀逸な道 1」という看板がついていた.「秀逸な道」には,これからも度々出会うことになる.

天気は微妙

苫小牧から2時間ほどバイクを走らせて,札幌に到着した.流石に都会だ.

駐輪場にバイクを停めて一旦Ninjaと別れ,友人との待ち合わせ場所に行く.ラーメンを食べたいと行ったら普通の (?) ラーメン屋に連れて行かれ,「俺は札幌のバターとかコーンとかが入ってる味噌ラーメンが食べたいんだ!」と主張したら,すすきのにあるラーメン横丁に連れて行ってくれた.

ラーメンを食べたあと,友人と少し札幌の街を歩く.札幌は東京や大阪みたいにギラギラしていないけど,面白いところが多くて,住みやすくていい感じの都会だと思った.

友人と別れ,Ninjaと合流し,14時半ごろ北を目指して出発.途中で札幌時計台の前を通ったが,かなり小さくて結構拍子抜けした.しばらくそれと気づかなかった.

また2時間ほど走り,滝川に到着.ここで夕飯を調達する.セイコーマートに入る.セイコーマートは,北海道にたくさん存在するコンビニであり,日本に現存する最も古いコンビニチェーンであるらしい.この旅では,セコマにたくさんお世話になることになる.

今日はキャンプだが,調理道具はNinjaが持ってきたガスバーナーと鍋だけである.なのでお湯を沸かしてカップ麺を作ろう.北海道限定のカップ焼きそばである,やきそば弁当を買った.旅行者はその土地限定のものにとことん弱い.

17時頃,吉野公園キャンプ場に到着.吉野公園キャンプ場は,キャンプ1張500円ととても安い.トイレや炊事場もちゃんとついており,向かいの施設には温泉もついているという,とても優秀なキャンプ場だ.真っ暗になる前にテントの設営を終える.

それにしても寒い.持ってきたありとあらゆる長袖の服を重ねたが,それでも凍えている.日が落ちて気温がどんどん下がる中,耐えられるかかなり心配だ.ひとまず向かいの温泉で温まって,元気が復活.

お湯を沸かしてカップ麺を食べる.お腹が空いていたので,やきそば弁当の大盛りを買ったのだが,カップ焼きそばの大盛りって終盤結構きつい.フードファイト round 2 をすることに.

星空がすごくきれいだった.

また寒くなってきたので,持ってきた毛布にくるまる.気温はどんどん下がり,テントやバイクなどいろいろなものが結露で濡れていく.テントに引きこもっていると少しは暖かく感じられた.テントの中ではNinjaと大富豪をした.2人でやるときにカードを全部配ると革命し放題でつまらないので,カードをランダムに半分くらい選んで,その中から2人で分配するということにした.一度勝つと相手から強いカードを徴収できるので勝ち続けられる.十数回やって,はじめの何回かは負け続けたが,一回逆転したらあとは俺の劇場となった.

10時頃就寝.重ね着+毛布で寝袋に入り,精一杯の寒さ対策をした.

今日の移動

175 km.経由地とかは適当に設定しているが,誤差はそんなに大きくないだろう.


Day 2 (9/21) 新十津川 → 美瑛 → 苫前

7時起床.生きていることに感謝.Ninjaは,朝起きたときに俺に息がなかったらどうしようかと心配していたらしい.しかし気温は12度で,やばい!

前日にコンビニで買ったパンを食べ,テントを撤収.

今日の行程を決める.今日は北海道の内陸部,旭川の少し下にある美瑛町【油】に向かう.ゆるやかな丘が広がるきれいな場所らしい.その後,苫前町 【エゾエンゴサクのあるところ】 辺りまで北上したい.寒すぎてキャンプはあまりしたくない.苫前の道の駅に食事付きで安く泊まれるらしいので電話してみたところ生憎満室だった.しかし,同じく苫前に別の食事付きで安く泊まれる「ななかまどの館」なる場所があり,幸運にも空いていたのでそこを予約する.

9時頃出発.前日にテントの中でインカムの接続を確認できたので,この日はインカムをつけて走ってみた.とても便利だ.「次のガソスタに入ろう」とか,信号でちぎられたときに「ちょっと先で停まってる」とか,「面白そうな場所があるから入ってみようぜ」とかを伝えられる.独り言が言えないのが難点.俺はバイクで走っているときはしばしば鼻歌を歌ったり奇声を上げたりするが,うっかりそれをしないように気をつけなければいけない.

10時半ごろ美瑛に到着.走っているときれいなお花畑が見えたので立ち寄る.ぜるぶの丘・亜斗夢の丘という場所だ.花畑の周囲をバギーで走れるらしく,面白そうなのでやってみる.道がガッタガタで,バイクの3倍位操縦が難しい.眺めを楽しむ余裕などなかったが,面白い体験だった.

これから,美瑛の有名なスポットを色々回る.

新栄の丘.写真が下手なのでいまいち映えないが,ずっと牧草地や畑などがある丘が続いていて,いい眺めだ.ただ,天気がもっとよければなあ.

肉眼だと立体感が感じられるが,写真だと難しい

ジェットコースターの路.真っ直ぐな道路で,一気に下ってからまた一気に上がる.こんなまっすぐな道を走ることはなかなかないので,面白い.

四季彩の丘.花畑.

ひまわりが俯いていて,夏の終わり.一人だけ,秋の訪れに抵抗してこちらを見ていた.

もうちょっと早い季節に来れば,ラベンダー畑が見れたのだろう.「物語のおわり」で言及されていた,ラベンダー畑が有名な富良野は,美瑛の近くだ.なんなら美瑛も「物語のおわり」に登場していた.

四季彩の丘の近くで昼ご飯.うどんを食べて温まった.

青い池.Macの背景に使われたことがあるらしい.以前福島の五色沼に行ったときも,同じような色の沼を見た.

池の中に立っている枯れ木は一体いつ生えていたのものなのだろうか.池ができたあとには生えることはできなさそうだが,池ができる前に生えていたのだとすると,かなり長い間枯れた状態でそこに立っていることにならないだろうか.池ができるのって何百年も前だろうから,そんなに長い間枯れ木が立っているのは不自然な気もする.と思って調べたら,実はこの池はつい最近できた人造池らしい.人造池と言っても,偶然の産物である.1989年につくられたダムに水が溜まって,いろいろ化学反応などが起こってこの色になったものが,1997年に写真家によって発見されたそうだ.そんなこともあるんだなあ.

セブンスターの木.セブンスタータバコのCMに登場したことによりこの名前に.

丘がきれい.

美瑛からは「人工的な自然」という印象を強く受けた.丘のなめらかな曲線が見えるのはその上に広がる畑や牧草地のおかげだろうし,花畑も人の手によって秩序を保っている.「自然の材料を使って作られた人工的な作品」と言ったほうが正確だろうか.人間によってきれいに整理された不自然な「自然」は,目を見張るような美しさを見せるが,同時に,ちょっとしたことで壊れてしまいそうな儚さを感じさせる.人類が滅亡したら,この風景も消えるからだ.

曇り空だけが悔やまれる.晴れていれば何の変哲もない風景も輝く.晴れていなくても美しい美瑛は,晴れていればどのように見えるのだろうか.

15時頃美瑛を出る.相変わらず寒い.曇っていて気温は上がらず,16度くらい.旭川のユニクロに向かい,防寒着を調達する.ヒートテックのインナーとタイツ,ダウンジャケットを購入した.早速ダウンを着て走ると,非常に快適.あまりにも優秀.かなり軽くて,本当に暖かいのか?と思ってしまうが,来てみると風を全然通さないし中もすごく暖かい.これで寒さに気を取られず,走りを楽しむことができる.

さて,次は苫前を目指す.まず,夕陽に向かって走って日本海に出る.北海道の日本海沿いには,小樽から稚内までを突っ切るオロロンラインという道路がある.オロロンラインに沿って北に進み,苫前を目指す.

美瑛から2時間ほど走って,オロロンラインに入ると,視界いっぱいの日本海に沈む太陽.

夕陽が見えるくらいには晴れて良かった.

日が沈んで暗くなってくると,夕焼けの赤と海の青が混ざって,白波は青紫色に見える.

オロロンラインは,今まで走った中で一番美しく楽しい道だった.これから北海道を周る中で,こんな道をたくさん走れるんだろうか.幸いなことに,この日走ったのは長い長いオロロンラインのほんの一部分だけだ.翌日もまた走ることになる.

苫前のななかまどの館に到着.公共施設って感じの場所.こんなきれいな個室に泊まれて,

こんな美味しそうなご飯が朝晩ついて一泊6,300円って破格すぎませんかね.

ご飯を食べたり風呂に入ったり洗濯したりしたあと,部屋に集まって明日の予定を決めたり,大富豪をしたりした.旅の間で勝ち越したほうが飯を奢られることにしようとかNinjaが言い出したので,ここから勝敗の記録をつける.今日は俺の5勝4敗.今回は一方が勝ち続けるということがなく,富豪と貧民がしょっちゅう入れ替わっていた.

今日の移動

280km.埋め込みの map だと高速を使ったことになっているが,使っていない.高速を避ける設定にしても,埋め込むとその設定が忘れられて困る.経由地を適当に設定することで高速を回避できるが面倒なのでやっていない.今後もこのようなことは起こる.


Day 3 (9/22) 苫前 → 稚内 → 雄武

7時半に起床.宿で朝食を食べ,8時半に出発.宿はこんな感じの建物だ.快晴.

この日はまずずっとオロロンラインを走って稚内 【冷たい水の沢】 まで行く.今日はインカム無しで走ることを提案した.今日は黙って景色を楽しみながら走りたいと思ったからだ.

期待を裏切らず,素晴らしい道だった.海岸から少し離れることもあったが,基本的にずっと海を眺めながら走ることができた.前日の,夕暮れの海ではなく,真っ青な海だ.

天塩町【梁の多い川】でオロロンラインが国道から道道 (笑) に切り替わるあたりから風景が変わってくる.交通量は比較的少なくなり,道はまっすぐで,両側に低い植物がいっぱいに広がっている.海がよく見える.サロベツ原野 【葦原にある川】 という地域だ.

道の脇に巨大な風車がズラッと並んでいるところは流石に笑ってしまった.この道良すぎる.

風車は好きだ.なんとなく「巨大なもの」が好きで,それが動いていたりすると特に良い.そして風車は極限まで切り詰められたデザインが良い.奇異な形をした人工物であるのに,大自然の中でも違和感がないのも不思議だ.

道端に停車.海までの距離が近いので草原をかき分けて岸まで歩いてみる.

これをかき分けて進む
かきわけて進んだ

いろいろな青がきれいだ.奥に見えるは利尻島【高い山】の利尻富士.富士という名前を関するだけあって,対称な美しい形をしている.

白は雲と波と風車,青は空と海

もう少しオロロンラインを進むと,北緯45度モニュメントがある.こちらとしては北の果てに来たつもりなのに,赤道からここに来るのとここから北極に行くのは同じ距離なのだ.地球の大きさが実感される.

写真によって海が青く見えたり緑色に見えたりするのなぜだろうね.

さらにサロベツ原野を走り続けると,稚内の市街地に近づく.サロベツ原野を走る道は,距離としては結構長いはずなのに,一瞬で走り抜けてしまった感じがある.道が楽しすぎて疲れも飽きも全く感じなかった.一日中走っていられるような爽快感があった.

インカムを切っていたのでNinjaとはぐれたが,稚内市内のコンビニで落ち合うことに成功.ちょうど昼頃なので,この辺で昼ご飯を食べたい.前日に稚内の食べ物を調べていて,たこしゃぶという名物があることを知ったので,それが食べられる店を目指すことにした.

その前にちょっと寄り道.北海道の北端といえば宗谷岬 【磯岩の岸】 だが,よく見ると稚内には突端部が2つある.宗谷岬でない方のとんがりが,ノシャップ岬 【岬のそば】 だ.稚内の市街地から5分程度で行ける.

イルカのモニュメントがある.

利尻富士がまだ見える.先程は北に見えたが,今度は南に望む.

防波堤を歩いて灯台まで行ってみる.

灯台はエモい.

寄り道終わり.たこしゃぶを食べに行く.

タコをこういう食べ方をするのは初めてで面白い.こういう大きな塊でタコが来ると,タコの歯ごたえがよく感じられて美味しい.

店の前の駐車場から,反対側のとんがりである宗谷岬が見える.風車が多すぎる.今からここを目指すのだ.

海沿いを走っていくのが一番近いが,ここでは少し内陸を通る.宗谷丘陵を通る道道889号が面白い.例の「秀逸な道」の一つだ.ずっとオロロンラインの真っ直ぐな道を通ってきたから,ワインディングが楽しい.

初めて鹿に遭遇!それも2回.道端に鹿がいて,目が合ったときにはビビった.幸い道路の方には飛び出して来ず,森の中に逃げていった.しなやかな跳躍が美しかった.

やっぱりいるんだなあ.山道は気をつけないと.

丘の上の方まで来ると,見晴らしが良くなる.どこまでも続く丘陵地帯が見える.風車が見える.海が見える.

この道良すぎ!

まだ面白いものがある.道道889号から小道に入ると,「白い道」に続く.

白い貝殻が敷き詰められている.超走りづらいが,眺めは最高だ.むしろ,遅く走らざるを得ないことで,眺めを楽しむ時間が増える.

タイヤが真っ白になっちゃった.

ところでリムが虹色に輝いていることに気づいた?シルバーのステッカーを貼ったのだが,光の当たり方によっていろいろな色になる.もともとかっこいいバイクが更にかっこよくなってしまって申し訳無さすら感じる.センスの塊と言っても過言ではない.

白い道を走り抜けるとすぐ日本最北端・宗谷岬に到達.

海の向こうに見えるのはサハリン.日本から外国の国土 (サハリンは......微妙) が見えるというのは経験がないので新鮮である.

北緯45度のところでも思ったが,この先にまだまだ北があるのだ.サハリンは北海道よりも南北に長いし,サハリンはロシアの中でも南のほうだ.それでもまだまだ北極には届かない.

観光客は多い.周囲には飲食店やお土産屋さんがあり,観光地って感じだ.

歩道に鹿がいた.人馴れしているらしく,近づいても平気で草を食んでいる.

鹿の角というのは全く不思議である.

この写真に写っている道路標識で思い出したが,この辺の道路標識には日本語,英語に加えてロシア語が書かれているものがいくつか見られた.やはりロシア出身の人も少なからず住んでいるのだろうか.

14時頃宗谷岬を出発.これからは,オホーツク海沿いにひたすら南下.雄武町【川尻が塞がるところ】にある日の出岬キャンプ場を目指す.

基本的に国道238号にずっと沿って下るだけだが,一度猿払村【葦原の河口】のところで道を外れて,エヌサカ線という道を走る.全長16kmのこの道は,ほとんど直線.両脇には牧草地が広がる.本当に何もなくて面白い.近くには建物などはないし,海も見えないし,ただ牧草地をまっすぐ突っ切る道だけが見える.

エヌサカ線を走ったあと,一旦コンビニで休憩.北海道限定商品「カツゲン」を飲む.だいたいヤクルト.うまい.

17時頃に日の出岬キャンプ場に到着.ここではキャンプをせず,バンガローに泊まる.一泊一棟 3,000 円.これは翌朝取った写真だが,こんな感じのバンガロー.広くて快適.

近くにホテルがあるので,そこのレストランで夕食.マグロとかサーモンとかが乗った丼.

ホテルの温泉に浸かったあと,バンガローに戻る.荷物を整理したり,ヘルメットを掃除したりした.バイクで走っていると,ヘルメットのシールドに虫の死骸とか体液が大量にくっつく.小さい羽虫とかはまあ死骸がくっつくだけなのでまだいいんだけど,たまに蜂とか蜻蛉とかのでかい虫がシールドに衝突して,変な色のついた体液を飛び散らせると,走行中気になる.ウェットティッシュで丁寧に拭き取った.

あとは大富豪.5戦全勝で,通算成績を10勝4敗とした.9時就寝.

今日は何もかも楽しかったな.晴れていたから.

今日の移動

362km.かなり移動した.宗谷岬までの道は楽しかったから全然疲れなかったけど,そこから南下する道はほとんどただの国道で特に眺めが良かったりするわけではないので疲れた.......埋め込みだと宗谷丘陵の辺りで気持ち悪いルートに改変されているが,普通に内陸を通っている.


Day 4 (9/23) 雄武 → 網走 → 美幌峠 → 知床

朝5時前に起床.なぜこんなに早いのかというと,当然日の出を見るためである.北海道の左側は夕日が,右側は朝日が良い.

岬の先端の岩場まで歩いていって,オホーツク海から登る太陽を見る.

この日の最終目的地は知床【土地の突き出たところ】.道中,見たいものが盛りだくさんだ.道東は楽しそうなところがたくさんあり,一番楽しみにしていたところである.

早速行動開始だ.荷物をまとめ,6時にキャンプ場をあとにする.近くのセコマに寄って朝食.適当におにぎりとかを食べる.セコマの多くにはキッチンがついており,できたてのおにぎりが食べられる.

まず向かったのは網走【漏る地】監獄博物館.9時オープンで,ちょうど9時頃到着.網走監獄はゴールデンカムイの重要な舞台なのでとても興味があった.

入口に人がいて驚いたが,よく見たら人形だった.

この博物館,至るところに人形が配置されているのだが,リアルすぎて面白い.建物に入ってすぐに人の気配を感じてぎょっとするとだいたいは人形である.

全部人形

ちゃんとゴールデンカムイしてた.

網走監獄の名残の建物が見れるだけではなく,北海道開拓史とかに関する展示も充実していて面白かった.北海道の開拓は,網走監獄などに収容されている囚人たちの労働力が非常に重要だったことを知った.囚人たちは非常に過酷な労働条件で働かされ,死者も多く出たことを知り,複雑な気持ちになった.

これは教誨堂.ゴールデンカムイの名シーンがここで起こるのだが,アニメで見たとおりの建物でテンションが上がった.聖地巡礼の醍醐味である.

一番の見所は五翼放射状平屋舎房.5本の長い建物が放射状に配置されており,中央の見張所からはすべての房を見渡せるようになっている.これもゴールデンカムイで見たとおりだ〜.

こんなの脱獄できるわけないんだよな.でも脱獄したやつが一人だけいたらしいです.昭和の脱獄王・白鳥由栄っていうんだけど.

脱獄しているやつがいる

ちょっと眺める程度のつもりだったけど,2時間位かけてじっくり見てしまった.監獄というものを見るのは初めてなので,牢屋などの建物を見るのが面白かったのはもちろん,北海道開拓の歴史についてすごく勉強になって,とても充実した時間を過ごすことができた.ツーリングだと自然にばかり目を向けがちだが,こういう歴史とか文化に触れる時間も楽しい.

次はすこし内陸の方へ向かう.道東に屈斜路湖【沼の水が流れ出る口】,摩周湖【神老婆】,阿寒湖【車輪】という3つの大きな湖がある.屈斜路湖の近くに,美幌峠【多くの石】という場所があり,ここが絶景スポットらしい.

1時間ほど走って,美幌峠に到着.峠の道の駅で昼食.山わさびラーメンを食べる.それと同時に,今晩泊まるところを探す.知床に「熊の入った家」というライダーズハウスを見つけ,連絡してみたらOKが得られたのでこの日の最終目的地が決定.

建物を出て,展望台まで歩いていくと,大パノラマが広がっている.

峠から屈斜路湖に向かって下っていく道が,バイクで走っていてとても楽しい.視界に入るもの何もかもが特大スケール.この道にも「秀逸な道」の看板が.間違いない.

ただ雲行きが怪しい.これから摩周湖に向かうが,天気予報では雨.合羽を着て走っていると,案の定途中から降り出した.しかも結構強くて,靴の中がびしょ濡れだ.ヘルメットに水滴がついて視界も悪い.めちゃくちゃ精神をすり減らして摩周湖にたどり着いたが,眺めは微妙.......

摩周湖は透明度が高くてきれいな青が見れるとのことで期待していたが,残念.晴れたときにリベンジしたい.ところで,晴れの摩周湖を見ると婚期が遅れるというジンクスがあることを「物語のおわり」で知った.婚期が遅れなかったということで......,良かったということにしよう.

再び海を目指して走り,斜里町【葦原】に向かう.走っている途中で雨がやみ,晴れてきた.助かる.

斜里には信じられないくらい長い直線道路がある.この道は普通に市街地とかも通る.

そして,この直線道路の端っこまで行って,振り返ると......,

この道は「天に続く道」と呼ばれている.

さて,知床半島の根元まで着た.あとは,知床半島の真ん中くらいまで行った後,知床横断道路を渡り,半島の反対側にある羅臼町【獣の骨のある所】にあるライダーズハウスに行く予定だ.

斜里から,知床半島の北側の海岸に沿って走る.海が間近に見えて,ここも「秀逸な道」だ!

途中,観光スポットらしきものがあったので立ち寄る.オシンコシンの滝【川下にエゾマツが群生する所】だ.

知床八景の一つであるらしい.知床は横断道路がすごいということしか調べてなかったので,他に何があるのか全然把握していなかった.八景というかたちで名所がまとめられているなら,全部回るしかないだろう!ただこの日はもう日が沈みかけていて遅いので,翌日の朝に回ることにしよう.

もう少し進むと道の駅がある.世界遺産知床の自然についての展示などがあった.そういえば世界遺産だったね(本当に何も調べてきていない人).近くに知床八景の一つであるオロンコ岩【オロッコ(異民族の名前)】があった.階段があって登れるらしいということがわかったので,翌日ここに寄って登ってみることにする.

もうちょっと進んで,知床八景の一つ,プユニ岬【穴のある所】.オホーツク海に沈む夕日がきれいだ.

知床半島の中間部まで来た.ここからは,知床横断道路を通って一気に半島を横切る.ワインディングが楽しい!

夕日に染まった羅臼岳がかっこいい.

横断道路の真ん中,知床峠に駐車場があって羅臼岳がよく見える.

下山し海へ.日が沈んで1時間位たち,かなり暗くなってきた.真っ暗になる前にライダーズハウスに到着.これは翌日朝取った写真だが,ここの2階に雑魚寝.

この日宿泊するライダーは我々しかいなかった.ライダー同士の交流ノートがあったので我々も書き込んでおいた.

お風呂を借り,その後セコマまで行って弁当などを買って夕食.疲れていたので1回だけ大富豪をした.1回だけなのでポイント2倍ということにした.今回は負け,通算10対6.

この日は早起きしたおかげで,日が出て明るい時間を最大限利用していろいろなところに行けた.これがかなり良かったので,翌日以降も日の出で起床して活動することにしよう.9時就寝.

今日の移動

374km.網走監獄とかで結構時間を使った割にはだいぶ進んだ.早起きは 100km の得かな...... (2時間あれば100km進めるので)


前編のまとめ

さて,前編では苫小牧から北海道を時計回りに回って,ちょうど反対側の知床までやってきた.Google maps で測った距離の総計は1191kmにも及ぶ.前半のハイライトは間違いなく3日目,稚内周辺だ.サロベツ原野や宗谷丘陵の海と風車の記憶が,旅行から1ヶ月経ってこの記事を書いている今でも鮮烈に思い出される.これらの道をもう一度走るというだけでも,もう一度北海道を目指す十分すぎる目的となる.

前編と後編に記事を分けた理由は,2つある.第一に,長すぎて一つの記事にすると読みにくいかもしれないと思ったからだ.前編だけですでに約25000字あり,先が思いやられる.第二に,一回最後までかきあげたのに,保存を忘れて8日目以降の記述が消し飛んだからだ.それで嫌になってしまったが,とりあえず前半だけでも公開しようと思い,記事を分割して前編という形でまとめた.

後編は理想的には近日中に公開したいが,消えた文章をもう一度書くのはかなり苦なので,しばらくかかるかもしれない.ただ,絶対に記録に残しておきたい景色があったので,記事を書くモチベーション自体は残っている.乞うご期待.

後編に続く