北海道一周記 (後編)

2023/9/20-9/27 にバイクで北海道を一周するツーリングをした.本記事は前編の続きとして,旅行5日目の 9/24 以降の出来事を記す.

行動記録

Day 5 (9/24) 知床 → 野付半島 → 根室 → 霧多布

5時に起床して日の出を見る.奥に見える陸は国後島.北方領土がこんなにすぐ近くに見えるとは思わなかった.こんなに近いのに,今は日本人が住んでいないということを思うと不思議な気持ちになる.

荷物をまとめて出発.まずは,半島の先端に向かって海沿いの道を走る.この道は先端の知床岬までは行けず,途中の相泊という地域で終わりになっている.

「キケン 道なし!」良い.

ここは一般人が車で到達できる日本最北東端である.東西南北は誰でも思いつくけど北東の端という発想はなく,一本取られたという感じだ.日本の凸包上にある点はすべて最〇〇端と言えるということになるのか.

ここから先に進むには歩くしかない.ヒグマと戦いながら1,2日歩けば,知床岬まで到達できるらしい.

この場所,「果て」感がたまらない.そう,本当の「果て」には観光客向けのモニュメントもお土産屋もなくて,ただぽつんと果てを表す小さな看板と,そのさらに向こう側の世界へのドアが立っているだけなんだ.この場所こそが求めていた「果て」であり,宗谷岬よりもずっと果てにあると言える.


道を戻って羅臼の市街地に行き,セコマで朝食.そして,知床横断道路を戻る.峠は雲の中で,羅臼岳が見えなかった.

まずは,オロンコ岩に行く.昨日見つけたが登れなかった階段を登るためだ.階段はかなり急で,一段一段が高く,また岩自体もかなり高さがあって,太ももが悲鳴を上げる.ここ数日ずっとバイクに乗りっぱなしで足を動かしていなかったというのもある.

岩の上は見晴らしが良い.

知床八景の残りを制覇しよう.夕陽台は昨日行っておくべきだったな......,午前中に行ってもしょうがないのでパス.夕陽はプユニ岬で見れたし.では次は「乙女の涙」.

知床自然センターにバイクを停め,そこから遊歩道を通って海岸まで行くと滝が見れるらしい.ヒグマがよく出るらしいので注意せよとの情報が出ている.昨日も目撃情報があったらしい.熊よけの鈴とか何も持っていないが......まあいいか!

鹿.

遊歩道を歩いていると,道の脇に腰の高さくらいの草が生えている茂みがあった.そこからガサガサという音が.......熊か!?と一瞬身構えた.ただ熊は大きいだろうからこの大きさの茂みには隠れられないだろう,狐とかの小動物の類なんだろうと思って素通りする.

海岸に到着.滝はこの写真に写っています.見つけられるかな?

海がきれいだし崖もかっこよくていい場所だった.

さて引き返そうというところで,遊歩道にいた別の人に話しかけられる.「この道の先に熊がいたので一緒に戻ってもらってもいいですか」

......!?

絶対さっきの茂みのガサガサじゃん.

さらに,遊歩道の向こうから人が歩いてきた.「さっきあそこで熊が木に登ってたんで気をつけてくださいね」おいおいマジかよ.

慎重に遊歩道を戻る.すると同行者たちが突然立ち止まって「うわ」とか「ヤバ」とかつぶやいて引き返そうとする.え,熊がいたのかと思って道端を探る.

熊は道端にはいなかった.

道の上にいた.さらに,遊歩道をこちらに向かって歩いてくるではないか.

なにこれホラー展開すぎる.みんな背を向けて(背を向けるべきではない)早歩きで逃げ出す.「くまだ!かわい〜」とか言って近寄って写真を撮っている観光客ががいたが無視!

遊歩道の先端まで逃走してきて,行き止まりになっていて万事休すと思いきや,車両用の別の道を見つけてそちらに逃げ込むことができた.この状況を見越して,遊歩道が袋小路にならないような設計にしていたのだとしたら賢すぎる.

別の道に逃げ込めば流石にもう追ってこないだろうと思いきや,ずっとついてくるんだが.......このまま自然センターまでついてこられても困る.あと,逃げ込んだ道の先にも熊がいたらもう本当に逃げ場がなくなって挟み撃ちにされるので,別の熊が出ませんように,これ以上ついてきませんように〜とカムイ様仏様にお祈りしながら逃げていた.ん,ヒグマもキムンカムイ【山の神】か.

幸い,曲がり角で熊は我々と反対方向に曲がり,歩み去っていった.

遊歩道にいた人が自然センターに連絡し,遊歩道は一時閉鎖.係の人が安全を確認しに行った.熊と戦えそうなくらい筋骨隆々な人だった.......

というわけで生還.スリルを楽しんでいた部分もあったことは否めない.貴重な経験ができて面白かったと感じている部分もあることは否めない.

次の知床八景は,知床五湖.無料で見れるのは2つだけ.それ以外も見たかったら講習を受ける必要があるらしいのでパス.

草原の中を木組みの遊歩道が通っていていい感じ.これなら熊の心配がない.

湖はこんな感じ.

鹿肉バーガーがあったので食べてみる.普通の牛肉みたいだった.

この先にさらにカムイワッカ湯の滝【魔の水】という知床八景の一つがあるが,要予約で時間もかなり掛かりそうなので今回は断念することに.ただ,とても面白い場所らしいのでいつか行ってみたい.

知床の自然の美は美瑛のそれとは対極にあるように感じる.人の手がほとんど加わっていない素朴な自然の風景が知床にある.人工的に整備された自然とは違う,均衡や調和,安心感,畏敬の念を感じる.どちらかというと俺は知床のほうが好きだ.

知床八景は多くが海沿いにある.これは,知床の海沿いくらいしか探検されていないからなのだろうか?海沿いだけでもこの密度で自然の美しい景色があるのなら,内陸にはまだまだ未発見の絶景が残っているのだろうか.

こういうところに来ると,登山やトレッキングをしてみたいと思う.今の所思うだけで,何も行動を起こしていないのだが.......手軽に行ける観光スポットとしての絶景ではなく,苦労してたどり着く絶景が見てみたいという気持ちになる.

知床八景巡りは今回のところはこれにて終了だ.横断道路を再び通って羅臼側に行く.

今度は峠は晴れていた.

横断道路の終わりのところで,水が大量に吹き出しているところがあった.ものすごい水圧で恐怖すら感じるレベルだ.写真だと水圧がわかりにくいが,爆音で大量の水が爆速で吹き出している.結局これが何なのかわかってない.Google マップ見ても何もないし.

次の目的地は野付半島【下顎】.野付半島は,知床半島と根室半島の中間にある半島である.そこそこ長いのだが,非常に細いので,地図を拡大してよく見ないとわからない.そして,見つけると,あまりの細さに笑ってしまう.こんなところに道路が通ってるのすごいな.......道路一本通すのがギリギリみたいな細さである.砂が堆積して,こんな場所ができたらしい.

そんな細さなので,右を見ても左を見ても海である.


知床半島がもうこんなに遠くに見える

半島の先端部には自然センターがあって野付半島の自然とか歴史が紹介されていた.鹿がいて驚いた.鹿って森の中に住んでいるものだと思っていたので,こんな低い草しか生えてない場所に鹿がいるとは.

道の終点には灯台があった.行ってみると小さい羽虫が大量にくっついてきてかなり最悪だった.まじで何?ダッシュで逃げ帰って虫を振り落としたが多分服の中とかにもいて,最悪.

14時頃.そろそろ昼ご飯を食べたい.野付半島の根元にある標津町【大きな川】は鮭の名産地らしいので,サーモン丼などを食べたいなと思ったけれど,日曜日だし微妙な時間だしで店がなかったので諦める.昼飯はなしでいいや.

次の目的地は根室半島【河口に流木が寄り集まる小川】の先端,納沙布岬【岬のそば】.稚内にあったノシャップ岬とは別物だ.ここは日本の離島を除いた本土で最東端の場所だ.日本の最東端は授業で習うけど本土の最東端は習わなかったので,納沙布岬を北海道に来るまで知らなかった.宗谷岬も授業では習わないか.日本の最北端は択捉島だと日本政府が主張しているため.ただ宗谷岬は納沙布岬よりもだいぶ有名だと思うので前から知っていた.

また2時間ほどバイクで走って納沙布岬に到着.

謎モニュメント.北方領土関連の気持ちを表しているらしい.

鐘.君の北方領土への気持ちを鳴らそう!

「北方領土を返せ!」という旗とかがたくさん立っている.納沙布岬の看板にも書いてあって,なんか嫌だな〜.

ちゃんと最東端って書いてある看板もあった.これを求めていた.

ここからは北方領土の歯舞群島が見える.写真だとかなり分かりづらいが.

北方領土問題は,いままでずっと蚊帳の外という感じでいたが,北方領土がすぐ近くに見えることが自分の目で確かめられると,さすがに気になっちゃうというか,この問題について知っておくべきなんじゃないかという気持ちになる.中学の歴史とかで習った気がするが忘却の彼方にいるので,Wikipedia とかを読んでこの問題の歴史について調べたりした.ずっと「北方領土は日本固有の領土です!」「ロシアが不法に占拠しています!」と教えられてきたのでそういうものなのかなあと思っていたけど,調べてみたら日本の言い分もロシアの言い分もどちらも筋が通っているところも理不尽なところもあるように感じられて,なんだかよくわからない.まあ対話をしてくれという感じなのだが,ロシアは「明らかにロシア領なので,領土問題は存在しない」と言って国際司法裁判所に行くことを拒んでいるらしい.だったらさっさと勝訴して日本を黙らせれば良いんじゃないですかね......と思ってしまうんだけどそういうもんじゃないんですかね.なんかめんどくさ.

この話終わり.16時半位.まだ泊まる場所を決めていなくてまずい.キャンプをしようという話になっていたが,根室にはキャンプ場がない.根室半島の根元の厚床【伸びている沼】にはあるが,少し高め.ちょっと遠いが,浜中町まで行けば安いキャンプ場がある.浜中町の霧多布岬【茅を刈る所】キャンプ場を見ていたら,激安バンガローがあったので,ここにすることにした.ここにたどり着く頃には日が暮れて暗くなっており,テントを張るのが嫌だからだ.

霧多布岬を目指す.途中で日が沈み,どんどん暗くなっていく.海沿いの道を選択したつもりが,道の両脇がずっと森で,街灯もなくてとても暗い.真っ暗になっても1時間位走り続ける羽目になり,かなり精神をすり減らした.暗いところの運転は気を使うからすごく疲れる.暗くなったら走るべきじゃない.

命からがら霧多布に到着.霧多布温泉ゆうゆという施設に行く.ここがキャンプ場の管理も行っており,ここでバンガローの鍵が借りられる.この施設は温泉とかレストランとかもついていてすごい.町が運営しているらしく,観光に力を入れていることが伝わってくる.

昼を抜いてお腹がぺこぺこなので夕食.とにかく量を食べたかったので特大の天丼を食べた.

キャンプ場に行く.バンガローはかなり小さく,照明もなかった.激安だったのでこんなもんか.設営する必要のないテントくらいに思えば良い.

荷物を整理した後,先程の施設に戻って温泉に入る.この日は本当に疲れたので,温泉で回復する.

バンガローに戻る.寝る前に大富豪を1戦.ポイント2倍.今日は勝った.通算12対6.9時就寝.

今日の移動

410km.バカの移動スケジュール.


Day 6 (9/25) 霧多布 → 釧路 → 襟裳岬 → 苫小牧

5時起床.霧多布岬も,日の出がきれいだ.

今日の目的は,北海道の下のとんがりの襟裳岬【岬】.ただそれ以外に特に行きたいところがないので,今日は移動がメインの日になりそうだ.どこまで進むかは,午前中の進捗を見ながら決めることにしよう.

今日も6時頃に出発し,道中セコマで朝食.

太平洋沿いの道をずっと走っていく.基本的に海から若干離れたところを走るのでそんなに面白くないが,たまにいい眺めの場所があったりする.走っていると,あやめヶ原という場所があり,駐車場があってその先に遊歩道があるらしいので行ってみる.

鹿.

天気がいいと,何もかもきれいに見える.

野付半島にいた例の虫がここにも大量にいたので逃げる.

しばらく西へ向かって走り続け,釧路【越える道】へ.釧路湿原に寄り道する.釧路湿原展望台にバイクを停め,森の中の遊歩道を歩いてしばらく進むと,見晴らしの良い展望台がある.

無.湿原って水が見えるわけではないんですね.

釧路では夕日が綺麗に見えるらしい.湿原の影響で大気中の水蒸気が多いのが理由である.空の色は,太陽光が大気中の分子とか水蒸気とか塵とかで散乱されることで決まる.日中は,波長が短く散乱されやすい青色が強調されて,空は青く見える.朝や夕方は,太陽の角度が低く,太陽光が大気の中をより長い距離通過するので,青い光は散乱されて減衰し,波長が長く散乱されにくい赤色が強調されるのである.大気中に水蒸気が多ければ,より散乱の効果が強くなり,夕日がより赤く見える.

ただ,昼に見ても別に面白いものではなかった.10時頃撤収し,次の目的地を目指す.

ここからはひたすら移動です.虚無過ぎた.大きな街もいい眺めもない無が50kmくらい続いたところがあり,腹が減ってガソリンも心配になってきても走り続けることしかできなかった.

1時位に,広尾町【蔭の所】という大きめの町があったので立ち寄って昼食.そばを食べた.

あと少し進めば,今日の目的地の襟裳岬だ.問題はどこに泊まるかだ.この先にいくつかキャンプ場があるが,貴族向けのキャンプ場か熊が出るキャンプ場しかない (失礼).えりもあたりで泊まるか,一気に苫小牧まで進むかの2択だ.昨日かなり移動したし,今日は余裕を持ってえりもで泊まるという案も検討したが,やっぱりこの先のことを考えるとたくさん進んだほうが良いということで苫小牧まで行くことになった.まだ昼だが今日の行程の半分弱をクリアしたので,ちょっと頑張れば苫小牧まで行けるだろうということで.苫小牧に,今年オープンしたライダーズハウスである「ライダーハウス苫小牧」があることを見つけ,そこに電話してみると泊まれるとのことだったので,今日はそこまで行くことにした.

腹ごしらえが済み,宿も決まったところで,また走り始める.道中,イケてる地名を見つけた.「音調津」【磯多き所】と書いて「おしらべつ」と読む.音調.調律.この漢字を当てた人はセンスがいい.

2時頃,襟裳岬に到着.風の館という施設があるので入ってみる.ウマ娘たちに出迎えられる.彼女らはこの辺の出身らしい.

襟裳岬にはアザラシがいるらしい.岬の先の方にある岩にアザラシがいて,施設内の望遠鏡を覗くとアザラシが見えるようにセットされていた.覗いたらちゃんとアザラシがいた.望遠鏡越しの写真を取るのが下手すぎる.真ん中の岩にアザラシがいるんですけどわかりますかね.

外に出て岬の先まで行ってみる.

襟裳岬は陸地側を見ても面白い.地図で見ればわかるが,襟裳岬はかなり鋭く尖っていて,そしてその角度がかなり長い距離続いている.他の岬よりも「先端」感が強くて良い.

売店で「昆布アイス」が売っていて,気になりまくったので買った.バニラアイスに昆布パウダーがかかっている感じだった.味は......,びっくりするほど反応に困る.うまくも不味くもない.こんなになんとも言えない食物を食べたことがない.

3時頃襟裳岬を発ち,苫小牧を目指す.めちゃくちゃ遠い.日が暮れたら走らないって昨日誓ったのに,今日も日が暮れてから1時間ほど走る羽目に.......ただ,交通量が多く,街灯が多くて明るい道だったので,昨日ほど辛くはなかった.

スタート地点に戻ってきてしまった.......6日で大回り1周したことになる.もしかしてかなり過酷なペースで進んでいる?

6時頃ライダーハウスに着く.ここでは他の宿泊客もいた.受付をしたり他の宿泊客やスタッフの方と少し会話をしたりしたあと,もう一度バイクに乗って苫小牧市街地を目指す.結構遠くて,10分くらい走った.

まずはコインランドリーに行って洗濯物を突っ込む.洗濯を回している間に飯.北海道にいるうちにジンギスカンを食べたい!ということで,ジンギスカンを食べる.

羊肉ってこんな感じなんだね.ちょっと独特の味がする.うまい.

洗濯物を回収し,銭湯に行き,ライダーハウスに戻る.戻ったのが10時過ぎ.大富豪はせずに寝た.

今日の移動

455km.愚の骨頂.これに更に苫小牧市街までの往復も加わる.


Day 7 (9/26) 苫小牧 → 小樽 → 神威岬 → ニセコ

今日はゆっくり目に7時頃起床.

さて1周して苫小牧に戻ってきたわけだが,ここからどうしようか.俺は9/29に宮城に帰っている必要があるが,それまで2,3日は旅を続けられる.天気予報を見ると,28から各地で雨らしいのでそれは避けたいから,27夜のフェリーで帰ることにしよう.今日と明日,走れる.

どこに行こう.正直この辺を回れるとは思っていなかったので,道央の観光地はあまり調べていなかったが,いくつか見たいところがある.Ninjaと話して,積丹【夏の村】の神威岬【神】,室蘭【小さな下り坂】の地球岬【親である断崖】,登別【色の濃い川】の地獄谷あたりは見たいということになった.ということで,苫小牧→小樽【砂浜の中の川】→積丹→ニセコ【峡谷にある川】→室蘭→登別→苫小牧という小ループをこの2日で走る.このループを時計回りに回るか反時計回りに回るかは結構悩んだ.天気予報を見る感じ,時計回りに回れば,今日は雨に降られる可能性が少しあるが,明日は確実に晴れの神威岬を見られる.反時計回りに回れば,おそらく雨は降らないが,神威岬での天気は微妙と思われる.結局,雨を避けることを優先して,反時計回りに回ることにした.

朝,他の宿泊客の方やライダーズハウスの人と話して,これから周るところのおすすめスポットとかを聞いた.ニセコに面白いダチョウの牧場があるということ,室蘭に行くなら白鳥大橋を通るべきだということ,室蘭ではカレーラーメンを食べるべきということなどなど.......旅の情報交換ができることが,こういう旅人が集まる宿に泊まる醍醐味であると感じた.

9時頃出発.2度目の支笏湖.初日と同じく天気は微妙.

少し雨が降ったりしたが途中から晴れてきた.12時半頃小樽に到着.運河だけ見て通過する.ほんとに一瞬しかいなかったけど,歴史的な建物が並んでいい感じの雰囲気の街だったな.飯も美味しいらしいし,いつかゆっくり観光したい.

神威岬を目指して走り続ける.海沿いに日本海追分ソーランラインという道が走っている.この道はかなり眺めが良くて楽しい.積丹の海が非常にきれいであることに気づく.底が見えるほど透明だ.

14時頃,積丹のレストランで昼ごはん.ウニ!

うまくないわけがない.

もう少し走ると神威岬.朝に見たときは曇予報だったけれど,快晴だ.

岬の先まで歩いていける.海がすごくきれい.

こんなにきれいな海を見たことがない.澄んだ海って,こんな青になるんだな.

色素を混ぜているんじゃないかと疑うくらい,鮮やかな青である.水自体にも色はついているのだということを意識させられる.

海面になにか模様が見える.潮の流れだとか,海底の模様だとか,色々な説がNinjaとの間で出たがよく分からず.調べてもよくわからなかった.

先端部にはいい感じの岩がある.

最後に夏を見たかもしれない.

すごくいいところだったな.北海道で見た全岬の中でダントツで美しくて面白いところだった.

3時半頃神威岬を出発.今日はニセコ五色温泉野営場というキャンプ場で泊まるので,ニセコを目指す.

しばらく海岸沿いや市街地を走ったのち,山の方に入っていく.ニセコパノラマラインという道に差し掛かった辺りで,寒くなってきたので一旦停車して上着を着る.ついでに,キャンプ場の近くに,今夜の夕食を調達するためのコンビニがあるかどうか探す.するとキャンプ場周辺にはコンビニが全然なく,最寄りのコンビニがキャンプ場から20分の距離の倶知安【泥土の濁川】にあることがわかる.さらに,現在地からキャンプ場の間の道にもコンビニがない.少し道を戻ればコンビニがあるが,そうするとキャンプ場につくのが20分くらい遅れてしまうだろう.もう日が沈んできており,真っ暗になる前にキャンプ場についてテントの設営をするには一刻も早くキャンプ場に着く必要がある.そのため,とりあえずまずキャンプ場を目指し,その後倶知安まで走って回出しに行くことにした.

ニセコパノラマラインは,ニセコの山々の間を塗って走る道である.晴れていれば,その名の通り大パノラマが楽しめたのだろうが,山は深い霧に覆われ,ほぼ何も見えなかった.

しばらく山道を進むと,突然温泉郷が現れる.五色温泉だ.キャンプ場もここにある.かなり暗くなってきていたが,かろうじてテントの設営に成功した.

これから山道を下って倶知安町に行く.キャンプ場に来るまでの山道は普通に2車線の道路だったが,キャンプ場から倶知安まで通じる道は急に車線が狭くなって,車が1台通るのがやっとという広さだ.これでも一方通行ではないのである.バイクなら幅に余裕はあるが,対向車が来たらおしまいだ.街灯もなくてハイビームでないと何も見えない上に,きついカーブが続くので見通しが全く悪い.こんなところでは絶対に鹿と遭遇したくない.対向車と動物に怯えながら地獄のような道を20分ほど走った.街に近づいてくると街灯がついて道が明るくなり,街灯の重要性を知った.

コンビニに到着.今夜もカップ麺とおにぎり.今回はセコマブランドの山わさび焼きそばを買った.そういえば,北海道に来てからしばしば山わさびを目にする.美幌峠でも山わさびラーメンを食べたのだった.北海道名物であるらしい.山わさびは普通のわさびのように緑色ではない.一見野菜の漬物か何かのように見えるが,味はちゃんとわさびなので,知らずに食べると危険だ.

さてこれから来た路を戻らなければいけない.......幸い,帰りも対向車には会わなかった.こんな時間にこんな道を走っているバカは我々しかいないということらしい.

命からがらキャンプ場に到着.今日はイージーモードのつもりだったのに,最後の倶知安までの往復で一気に疲れた.

腹ごしらえが済んだら,キャンプ場の向かいの温泉に入る.温泉の建物に入ると食堂があり,あの道を走ってコンビニまで行く必要はなかったのか,と悲しい気持ちになる.しかしここで,この食堂はこの温泉旅館の宿泊客向けの食堂であるということを知って,嬉しい気持ちになる.別に嬉しくはない.

温泉は硫黄の匂いが強くて,めちゃくちゃ熱かった.慣れると気持ちが良い.

テントに戻り,明日最終日の予定を確認する.ニセコ,洞爺湖【湖の岸】,室蘭,登別と周って最後に苫小牧でフェリーに乗り込む.ここでフェリーの予約を済ませておいた.

大富豪の時間だ.今夜が北海道での最後の夜.もちろん得点は2倍だ.ここまでで俺は12対6と大きく勝ち越している.終わりを決めないと切りがないので,10時までやってその時点での得点で勝敗を決めることにした.

初戦が重要である.そして,初戦を制した.この先俺が有利に進められるのは大きい.

2戦目も勝利した.そろそろ俺の勝利を確信する.

3戦目で早々に負けて16対8.それでもあまり心配していない.これ以降で一回でも俺が勝てば,10時まで持ちこたえられるだろう.

ここから4連敗で16対16.は?

時刻は10時少し前.次が最後の一戦になる.そして俺は貧民だ.

負けた!!!カス!!!!二度とこんなクソゲーやらないぞと叫んで不貞寝.

今日の移動

282km.久しぶりに300kmを切った.


Day 8 (9/27) ニセコ → 登別 → 苫小牧

7時頃起床.テントを撤収し,出発.

ところで,こんな感じの山がキャンプ場の隣りにある.岩肌が見えていて温泉らしい.

山を下ってニセコの街中へ.セコマに寄って朝食を取った後,道の駅に向かう.目当ては,ダチョウのどら焼きだ.

昨日ライダーズハウスで教えてもらったダチョウの牧場というのがダチョウの卵を使ったどら焼きを作っており,それが道の駅に出品されていると知ったので寄った.どら焼きはとても大きい.卵の大きさに比例させているのだろうか.味も美味しい.鶏の卵との違いは......知らない.

次はそのダチョウの牧場だ.第二有島ダチョウ牧場という場所だ.無料でダチョウを見ることができて,100円で餌付けできる.

ダチョウという生き物は非常に面白い.長い首を器用にくねらせて,柵の隙間から首を出して餌を突く.油断すると手に持っている餌を直接狙ってくるのでビビる.そして頭の悪そうな顔がなんとも良い.

さんざんダチョウと遊んだ後,洞爺湖を目指して出発.

途中にいい感じの展望台があるので立ち寄る.

洞爺湖にも,湖面に模様ができる.湖だから潮の流れではないのだろう.風でこのような模様はできるのか?神威岬とかで見た,海面の模様とは同じものなのだろうか?

湖沿いの道を走る.木に遮られている場所が多かったが,ときどき湖がよく見える場所がある.

湖の中に島があるのが,趣があって良い.

次は室蘭に向かう.白鳥大橋という大きな橋を通る.橋を走るのは面白い.両側に海が見えるから景色が良いし,地面から浮かんでいる浮遊感が楽しい.

白鳥大橋を渡った先の港に,巨大な客船が停まっていた.

そこから少し進んで,室蘭の先端の地球岬に到着.

地球岬は「北海道の自然100選」で1位に選ばれているらしい.確かに眺めは良いが......,神威岬のほうがきれいだと感じた.地球岬もきれいであることには間違いない.神威岬が良すぎるのが悪い.

遠くに見える陸地は,北海道のしっぽの部分である渡島半島である.結局,今回の旅では函館方面には行くことができなかった.北海道の各地に宿題事項を残していて,次に来るときももう一度一周する必要がありそう.

ちょうど12時過ぎなので,地球岬で昼ご飯を食べることにする.室蘭はカレーラーメンなるものが有名である.カレーうどんのスープを少し薄めてラーメンに合うようにした感じのものを想像していたら,想像通りのものが出てきた.

味も想像通り.うまい.

店員さんに,「みたらの方は行きましたか」と尋ねられる.みたらを知らないのでいいえと答えたら,いまそこに豪華客船が停まっていて今日は外国人観光客が多いのだと教えてくれる.さっきの白鳥大橋のところに停まっていた船のことか.

Ninjaが,白鳥大橋のところまで引き返して橋の写真を取りたいというので,ついでにもう一回その豪華客船を見に行くことにする.

その前に少し寄り道.トッカリショ【アザラシ岩】という場所がある.

ここも海がきれいだ.岩の形がかっこいい.

白鳥大橋まで引き返す.下からの写真はこんな感じ.走っていると気づかないが,下から見るとかなり長い橋であることがわかる.

これが例の豪華客船だ.我々が乗ってきたフェリーと比べて格段に大きい.窓もたくさんある.この船は「セレブリティ・ミレニアム」といい,乗員乗客合わせて4千人が乗っているそうだ.5年ぶりに室蘭港に寄港したらしく,ニュースになっていた.確かに,写真を撮っている人が多く見られる.ちょうど27日朝に入港し,夜には出港したらしいので,ちょうどよいタイミングで室蘭に来られた.

目的を達成したところで,再び白鳥大橋を通って今度は北へ.登別を目指す.1時間ほど走り,2時半頃に登別温泉・地獄谷に到着.

赤い岩肌がむき出しになっており,草がほとんど生えておらず,至るところから煙が吹き出している ― 地獄という名にふさわしい光景である.

硫黄の匂いがする白く濁った川が湯気を上げながら流れている.多分めちゃくちゃ熱い.

おもしれ〜.

地獄谷の駐車場のチケットで,一緒に少し離れたところにある大湯沼というところにも停められると知ったので,そこにも行ってみる.こちらは,湯気がもうもうと立ち上る大きな沼だ.

沼の底からガスが吹き出ているらしく,表面に気泡が見える.このガスは120度あり,それによって温められたこの沼の水温は60度もあるらしい.

グツグツ煮えたぎっている感じが地獄感があって良い.なんなら地獄谷よりも地獄感がある.釜茹で地獄的な.

大湯沼の近くに天然足湯があるというので行ってみる.大湯沼から流れ出る水が川となっており,その途中の適当に冷めた所に足湯スポットがある.川は白く濁っており,川底はエメラルドグリーンに見える.足湯は......,普通に温かかった.

これが最後の観光場所だ.時刻は3時半.5時までに苫小牧のフェリー乗り場で乗船手続きをしなければいけない.登別から苫小牧までの海沿いの道を走り,5時前にフェリー乗り場に到着した.

乗船手続きをし,売店でフェリーの中で食べるための夜飯を買う.

6時前に乗船開始.フェリーに乗り込む前に,今回の北海道ツーリングの走行距離を確認する.Ninjaが北海道に着いたときに,距離のメータを0にセットしていたのだ.俺は忘れていた.しかし,ほとんど一緒に行動していたので,俺もNinjaも距離は大して変わらないだろう.そして結果は......2,713km! 一日平均約340km 走ったことになる.そんなに走るつもり無かったんだけどな.......過酷なペースではあったが,いろいろな場所で面白いものを見れたので良しとしよう.

フェリーに乗り込んで,長かった北海道でのバイク移動をついに終えた.

帰りのフェリーは行きと異なりいしかり.去年関西旅行に行ったときにも乗ったやつだったので見覚えがある船内だった.出港まで,フェリーに積み込まれるトラックを眺めながらデッキでNinjaと雑談していた.

出港.さようなら,夢の国.

飯を食って酒を飲んだら眠くなったので早く寝た.

今日の移動

225km.久しぶりに楽な移動だった.


Day 9 and after (9/28-)

10時に仙台港に入港.そのままNinjaと別れ,帰宅.この日は荷物を整理したりして寝た.

翌日29日は昼から新幹線に乗って東京へ.移動しすぎ!

30日に東京で用事があり,夜に新幹線で帰ってきた.

その後はもう10月で新学期が始まる.平日の昼間は大学に行っているので記事を書く暇がない.夜帰ってきてからちまちまと書き進めていたが,書くことが多すぎて全然進まない.嫌になって,気分転換にゴールデンカムイの続きを流し始めたら面白すぎてやめられず,さらに執筆が進まないという事態になっていた.

ところで,サイドバッグの角がタイヤと擦れてずたずたになった.旅の終盤には,擦らないようなうまい積み込み方を習得したが,それまでに擦りまくったせいでサイドバッグの四隅が消えた.裁縫で補修.古いジーンズの切れ端を内側と外側から当てて縫い付けた.裁縫とかいうイベントが発生するのは中学 (小学?) の家庭科以来だが,玉結びとか玉留めとかは割と体が覚えていた.当時は,こんなもの学校で習う必要があるのかと感じていたが,時が経ってからその重要性に気づく.

これを直す
直した

1週間ほどで,やったことは一通り書き終えた.ここからさらに調べものをしたりとか感想を書いたりとかして,推敲して,写真を貼らなければいけない.写真を貼るのがめんどくさすぎて2週間ほど放置していた.まあ研究室やサークルが忙しかったというのもある.

2週間経って,流石にそろそろ手を付けるかと思って記事を開くと,保存を忘れていて8日目以降の記述が全部消し飛んでいることに気づく.これによってさらに記事の公開が遅くなってしまう.とりあえず前半だけでも早く公開しようということで,前編と後編に分割した.

旅行から1ヶ月経って記憶が薄れてきている中,なんとか8日目以降の記述を完成させて,後編も書き終えた.

振り返り

特に面白かった所

  • サロベツ原野
    • どこまでも広がる草原と海と風車の圧倒的な爽快感.それを貫く直線道路を走る高揚感
  • 宗谷丘陵
    • 丘と海と風車.白い道の現実離れした光景
  • 知床
    • 圧倒的に豊かな自然.熊に出会ったこと
  • 神威岬
    • 海の透き通る青さ

やり残したこと

  • 晴れの美瑛を見る
  • 晴れの屈斜路湖,摩周湖,阿寒湖を見る
  • 知床でカムイワッカ湯の滝を見る
  • 網走の夕陽を見る
  • 札幌,小樽をちゃんと観光する
  • 函館に行く

良かった点

  • 美しい景色をたくさん見られた
  • 楽しい道をたくさん走れた
  • 大きなトラブルがなかった
  • びっくりするほど順調だった

悪かった点

  • 北海道の寒さを甘く見ていた
  • 移動スケジュールが過酷すぎた
  • 150cc で北海道ツーリングはきつい
  • 大富豪で負けた

最後に

来春から東京に引っ越すし,冬になったらバイクには乗らないので,このバイクに乗れるのは今が本当に最後だと思う.最後に紅葉狩りにでも行こうかなあと思っている.

北海道にはまた来るんだと思う.ライダーが北海道に飽きることはないんだと思う.