大学 振り返り

この3月をもって東北大学工学部を卒業したので,総括をする.

まず,大学の間に起きた自分にとって重要だったできごとや活動を簡単に振り返る.次に,大学で学んだことを述べる.最後に,全体を振り返っていくつか感想を述べる.

できごと

1年

  • 入学前にコロナが流行り始め,大学に足を運ぶ機会がほとんどなかった.
  • 大学発のAIベンチャーで,開発やデータ分析のバイトをはじめた.好きであり得意でもあるプログラミングの仕事をできるのが楽しかった.また,大学でもトップクラスに優秀な人達が集まっているところだったから,刺激を受けたしいい人脈ができた.
  • 創造工学研修という授業が面白かった.これは研究室に配属されて先生と一緒に半年間何かをするという授業である.俺は統計物理の研究室に配属されて,基礎的なことを勉強したりシミュレーションを書いたりした.能動的な学習ができて楽しかった.また,大学の研究室の雰囲気を知れたのも刺激的だった.
  • 競プロ
    • 浪人していたときの冬に初めた競プロにずっと熱を上げていた.大学が暇だった代わりに,四六時中問題を考えていた.
    • AtCoder黄色を達成
    • ICPC国内予選.チームメンバーのレート的には順当に行けば通るはずだったが,本番でコケて行けず,すごく悔しかった. randomthoughts.hatenablog.com
  • いくつかのコンテンツにハマった.これらへの愛は今でも続いている.
    • アニメを見始めた.それまでほとんど見ていなかったが,大学の理系学部には当然アニメオタクがたくさんおり,彼らから影響を受けて見始めたら面白すぎた.
    • 森博嗣の小説を読み漁っていた.天才キャラが好きなので犀川創平のファンになってしまった.また,舞台の多くが大学の特に理系学部であり,身近な設定にも惹かれた.
    • ヨルシカにハマった.理由はよくわからないなあ.直感的に良いと感じた.

2年

  • 学問
    • 数学をやり始めた.松坂和夫「集合位相入門」という数学書を買ってきて,本が手垢で変色するまで一字一句噛み締めながら読んだ.脳が作り変わっていく感覚があって非常に面白かった.集合位相以降も,何らかの数学をやる習慣がついた.
    • 数物セミナーというゼミ合宿に参加した.はじめて自主ゼミというものをやったが,大学の講義よりもずっと能動的に取り組めて有意義だと感じた.このときは,1年の創造工学研修でやった統計力学に興味があったので統計力学のゼミをやった.
  • 進路
    • もともとエンジニア志望だったが,研究者を志すようになった.
    • 興味が応用から理論の方に移ったから.授業やバイトを通して,俺は実装よりも数式の方が面白いと感じるということがわかってきた.
    • 森博嗣の小説に出てくる研究者がかっこよかったから.
  • 競プロ
    • 競プロサークルのサークル長になった.
    • ICPCの国内予選に出た.なんかもう信じられないくらい楽しくて,これが大学生活の中で一番輝いていた瞬間だったと思う. sotanishy.hatenablog.com
    • ICPCのアジア大会(オンライン)も,いい感じだった.世界大会までは実力が全然足りなかったけど,健闘したと思う. sotanishy.hatenablog.com
    • 競プロサークルのメンバーで問題を作ってコンテストを開いた(東北大学プログラミングコンテスト TUPC2021).みんなでなにかを作るっていう経験がすごく楽しくて達成感があった.
  • その他
    • きっかけを忘れたけど,本をたくさん読むようになった.この時期からコンスタントに毎月10冊くらい読んでいると思う.1/2くらい小説,1/4くらい数学や物理の専門書,1/4くらい雑多な話題(哲学,歴史,宗教,脳科学,芸術など?)かなあ.
    • 原付に乗り始めた.楽しい. randomthoughts.hatenablog.com
    • 居合道同好会というサークルに入った.なんとなく武道に興味があったからというのと,対面で活動するようなコミュニティがなくて寂しかったからだ.たまに足を運んで稽古した.面白い.

3年

  • 学問
    • 授業は専門的になってきて楽しい.
    • 自主ゼミをいくつかやった.やっぱり授業よりもずっと身につく.
  • バイク,旅行
    • 2年生の頃原付であちこち行っていたが,やっぱりバイクに乗りたい!と思って教習所に通い,夏前に免許を取った.
    • 関西旅行 randomthoughts.hatenablog.com
    • 例のAIベンチャーのバイトでアメリカ出張に行った.ラスベガス楽しい!
    • 関東旅行 randomthoughts.hatenablog.com
  • 競プロ
    • オンサイトコンテストで何度か東京に行く機会を得た.
    • この年もICPCの国内予選を突破.アジア大会は横浜でオンサイト,楽しい!コンテストの出来は微妙だったけど. sotanishy.hatenablog.com
    • AtCoder橙を達成
    • TUPC2022 sotanishy.hatenablog.com

4年

  • 夏に外部の院試を受けたら受かった.
  • 研究
    • 研究室に配属された.この年はこれが生活の中心となった.
    • 春はひたすら論文を読んでテーマ探し.あとは前提知識の勉強.
    • 夏は院試,バイト,サークルなどを理由におやすみ
    • 秋以降は研究を進める.大雑把に言うと,ニューラルネットワークの性能を統計物理の計算手法によって解析するという研究.計算に手こずったり数値実験と合わなかったりと結構苦労したが,結局いい感じの結果が出た.
    • 年明け以降は研究のまとめがメイン.卒論を書いたり学会発表をしたり.
    • B4のうちに研究テーマ探し→研究→論文執筆,学会発表の流れを一通り経験できてよかった.やっぱり研究楽しいわ.この道に進むことを決意.
  • 競プロ
    • ICPC国内予選.この大学での最後のICPCになるので頑張りたかったが,大コケして予選落ち.流石に辛いものがあった.信じられないくらい悔しかった. sotanishy.hatenablog.com
    • TUPC2023 sotanishy.hatenablog.com
  • 旅行

大学で学んだこと

  • 研究の(一般的な)方法や態度.
  • 研究をすれば,学会やセミナーなどの出張でいろいろなところを人の金で旅行できて楽しい(不純だが重要な動機).
  • なにか学んだと思えるのはだいたい授業の外においてである(専門的な内容ですらも).授業の外で学ぶ努力をしなければいけない.
  • どうもこの世間は人脈ゲーであるらしい.特に,研究者界隈はそうであるように見える.
  • 世界にはすごい人がたくさんいて,お前(俺)は取るに足らない.
  • すごい人が周りにいる環境に身を置くと刺激になる.
  • なにか没頭できることがあると楽しい.
  • 洗練された理論は震えるほど美しい.自然は信じられないほど美しい.
  • あとは人間の創造性も美しい.
  • 創造性が大事.創造できる人間が一番すごい.
  • 創造は苦しいが楽しい.

学んだかどうかと実践できているかどうかは別の話.実践は......,まだ全然足りない.

振り返り

  • この人生でやりたいことを見つけられてよかった.入学時にもやりたいことはあったわけだが,実際にやってみてなんか違うなとなった.そして,別のやりたいことを見つけられた.
  • 振り返ると,いろいろやったなあという気もするが,もっとできたと思うし,尖りが足りないとも思う.ストイックさが全然足りない.基本的に怠惰な生活を送っていた.
  • あまり社交的な方ではなかったが,俺の人間関係の範囲内だけでもたくさんのすごい人に出会えた.すごい人1人とたまたま知り合えると,芋づる式にそこから人脈が広がっていった.
  • コロナは本当に辛くて,時間を返してほしいという気持ちでいっぱいなのが正直なところだが,コロナがあったからこそ競プロに打ち込めたというのもあるはずなので,悪いことばかりではなかったかもしれない.
  • 本をたくさん読む習慣ができたのは良かった.本にすべての解決を求める癖がついてしまったのは良くないかも知れないが.

楽しかったこと

  • 競プロ.特にICPCとTUPC.
  • 居合道.居合道が面白いというか(面白いんだけど),サークルの人間が良かった.
  • 旅行とバイク.知らない世界をたくさん知れた.特に関西旅行と北海道ツーリングは良かったなあ.
  • 勉強.授業は正直なところだいたいつまらなかったが,自分で数学や物理の本を読んだり,友達とゼミをやっているときはすごく楽しかった.
  • 研究.特に,すごい論文を読んだとき,詰まっていた問題が解決して全能感を感じるとき,研究発表の際に自分の研究に興味を持ってもらえたとき,研究室の飲み会のとき.あとは,つまらない結果であれ,自分が世界初の発見者であるという感覚にしびれる.

最後に

大学は中学高校のように密なコミュニティではないし,みんな大人になってしまったので,卒業に伴う感傷みたいなものはあまりないと思っていた.
でも,最後に友達と遊んだり,サークルとかの送別会に行ったりしたら,流石に寂しくなってきてしまった.4年間楽しかった.

一つ,大きな後悔があるとすれば,日々の密度がすこし薄かったかなあ,という点である.ダラダラと過ごしてしまった.やろうと思えばもっとやれるとわかっていながら,そのやる気が出てこない性格はとうとう直らずじまい.

最後に,卒業前の俺の感情をめちゃくちゃにした,俵万智の歌を2つ挙げて,本記事および大学生活を締めくくるとする.

これからの二ヶ月のこと何もかも思い出として始まる二月
さよならに向かって朝がくることの涙の味でオムレツを焼く